海が全てを飲み込んでいく。
沈むまいと抵抗していた太陽も、
諦めたように波に身を任せた。

「真っ暗だな。」
凛の声ではっとする。
いつの間にか星空が広がっていた。
「星が綺麗だね……」
呟くように返す。

向こうから悔しそうな
楓の声が聞こえる。
ゲーム類にとことん弱いくせに、
自分が勝つまで続けるのだ。
今夜は船上で一晩を過ごす。
船で寝るのは初めてだ。

翌日、アッサの足音で目が覚めた。
思わず顔をしかめる。
兄弟はもう起きているようだが、
楓はこんなうるさい中まだ夢の中だ。

男連中はどうしてこうも
起床が早いのか……呆れながら
梯子を登り外に出てみると、
男連中は木箱の移動に
四苦八苦していた。
「ん?何してるの?」
不思議に思って聞いてみる。
「一か所にまとてるんだ。
後が楽だからな。」

楓は事が完了した頃に起きてきた。
「あれー?少し広くなったー?」
本当に暢気な姉だ。