港が見えなくなると四人は
黒い服に着替え、
のんびりと海を眺めた。
 
船はやる気がなさそうに
のろのろと進み、
どこまでも青く深い海は、
そんな船の我が儘を許すように、
穏やかな波で私達を包んだ。

ここへ来て私は、
頭をフル回転させていた。

今まで当たり前のように
一か月と二週間生活してきたけど、
よく考えてみれば今、
生死の狭間をうろうろしているのだ。

そしてついつい忘れてしまうのが、
ここが異次元であり、異国である事。
言葉は通じるのに風景が日本ではないと、
何だか混乱する。

楓は積み上げられた木箱の向こうで、
風とチェスを楽しんでいる。
私は定位置となった凛の隣で、
鎖をジャラジャラさせる様子を見ていた。

城に行ってから癖となったその仕草は、
まるで鎖を取ろうとしてるように見える。

今二人のスカイチェーンの色は、
パールグレー。
きっとあと一息で透明になり、
外れるのだろう。
 
でも私は、
その最後の鍵を見つけられずにいた。