ゼノの友人である
海賊のバルド一族が、
エルサレムに向かう途中の
ペルシアの使者から盗んだ後、
また何者かに盗まれ、
今はアレキサンドリアにある。
しかも、城の地下貯蔵室に。

誰かが盗んだ後、
王族に上程したのかもしれない。

皆が咽喉から手が出るほど
欲しがっている壺……
どんな魅力があるのだろう――

出発の朝は慌ただしかった。
大きな木箱に収められた贈物の山を、
手押し車に積んで馬で港に向かう。

王子はラッパ隊を連れていて、
ガードもすごかった。

王子は船に乗り込む私達を
少し羨ましそうに見ながら、
最後にはしっかりと握手を交わし、
お別れの言葉を告げた。

楓は船員の中にアッサを見つけて、
意地悪く荷物を沢山持たせて
楽しんでいる。

それほど大きくない船は
ゆっくりと動き出し、
私達はアレキサンドリアを離れた。
 
陛下は見送りに来られなかったけど、
陛下のラッパ隊はいつまでも
その美しい音色を奏でていた。