気づくと陽はとっくに沈んでいて、
城のあちこちで松明が灯り始めていた。

下に降りながら辺りに目を配り、
見張りの位置を覚える。

食堂に着くと、
楓と風は既に座って待っていた。

「何やってたのー?お腹空き過ぎて、
ぐるぐるいってたんだよー」
「ん、ごめん、ごめん。」

すると、王子が入って来た。
「陛下はお部屋で休まれるそうなので、
わたくしがご一緒させて頂きます。」

そう言って彼は名乗った。
といっても、陛下と同じ名前だ。
そこで私達は、
彼を名前ではなく王子と呼んだ。

「明日は皆様を大図書館へ
 ご案内しましょう。」
「図書館、ですか……」
風が興味なさそうに答えた。
 
「ここには劇場、浴場、神殿、
 博物館などが集まっています。
 外国の学者の方々も、ここ
 アレキサンドリアで学んでいます。
 市場には珍しい品々が
 びっしりと並べられていますし、
 何でも手に入りますよ。雪以外はね。」
 
王子は笑って言った。