私は泣きたかった。
あまりに無力な自分が悲しかった。

凛だけでなく風も、楓も救えない。
横になりながら考えていたら、
涙が出てきた。起き上がると、
相変わらず風はいない。

外に出て顔を洗いながら、再び思う。

こんなに助けたいのに、
それが出来ない自分が憎い。

凛に生きて欲しい……生きて、
向こうでまた会って、
同じ高校に行って、
帰りに一緒にたこ焼き屋に寄り道する。
いや、クレープでもいい。
 
想像したら自然に笑みがこぼれる。
凛にクレープはあまりに似合わない。
「何一人で笑ってんだ、気持ち悪い。」
「起きてたの?」

凛は質問には答えず水で顔を洗うと、
私の隣に胡坐をかいた。

「どうしたの?」
「お前が泣いてるように見えたから
 来てみたら、笑ってた。」
「泣いてたよ。」
「何で?」
「私、役立たずだなと思って……」
「あぁ、じゃ何で笑ってたんだ?」
「凛はやっぱりクレープより
 たこ焼きかな、と思って。」
「はぁ?何だそれ。」