風と凛は剣を渡され、
外の練習場でアッサと練習を始める。

アッサは黒ずくめの名前だ。
ここでは私達も黒ずくめなので、
彼の事は名前で呼ぶ事にする。

私と楓はとにかく速く走れるよう
訓練を受けた。女はいざという時
逃げるのが一番なのだそうだ。
 
昼は材料も分からないご飯を食べ、
食休みを取って実戦練習を受ける。
夜になると体中が痛み、
ベッドに倒れ込むようにして眠る。

それでも楓と風は痛む体に、
ムチ打って貴重な睡眠時間を裂き、
夜中おしゃべりをしていた。

楓は風の鎖を取ろうと必死だ。
そんな楓の姿を見て、
風も心を開いたのか、
楓に全てを打ち明けている様だった。

風の過去を全部丸ごと包んで
受け止めてくれる楓は、
今や風にとって
掛け替えのない存在となっていた。

今、風の鎖の色はHB鉛筆のような
薄い灰色。後一歩なのだろう……

分かっている、私がやるしかない。
分かっているのに……出来ない。

最初に色が変わってから暫く経つ。

ゼノの訓練を二週間受けて、
凛も随分逞しくなった。
けれどあれ以来、一度も
色は変わってくれない。