ゼノは刺客だった。

今回の計画は殺しではないものの、
想像を絶する内容だった。
城の地下貯蔵室に忍び込んで、
ペルシアの壺を盗み出す、というのだ。

そんな事が可能なのだろうか。

「そこで君達の出番だ。」
ゼノは熱く語っていた。

「君達を東洋の使いとして
 送り込むから、二週間で城内の
 詳しい地図を仕上げて欲しい。
 特に見張りの立ち位置は念入りに。
これが地図だ。」
 
「地図なら今、持ってるじゃん。」
 抗議する風に、ゼノは言った。

「見張りの位置を正確に
 記して欲しいんだ。
 難しい事じゃないだろ?
 何かあったら、部屋の窓辺に
 白花を飾れ。すぐ使いをよこす。
 それから香は焚くなよ。
 二人が王子と姫役だ。」

顔を赤らめて頷く楓を見て、
にやっと笑う。
「君達は従者でいいかい?」
私と凛も黙って頷いた。

「そうと決まれば準備開始だ!」

ゼノの家での生活は、
決して楽なものではなかった。

朝早くに起床し、
アンチョビパンを食べて
黒い服に着替える。