人気のない路地を選んで胡坐をかくと、
皆で最後の食糧に口を付けながら、
これからどうするか考えた。

姉である楓の、
「野宿を続けてサバイバル生活に挑戦!」
という無謀な意見を断固拒否し、
「宿を借りて生活しよう」
という至極全うな意見を出してみた。

風は宿を借りるには働いて、
お金を稼がなければいけない。
今から仕事を探すのは難しいので、
城に潜り込むという意見を出した。

確かにこの格好なら使者だの、
貿易大臣だの装えるだろうけど、
三か月城に留まるのは難しそうだ。

「タダで泊めてくれる所ないかなー」
そう楓がぼやいた丁度その時、
黒ずくめの男が目の前を通りかかった。

背が高く肩幅も広く、全体的に
大きな人という印象を与えるその男は、
立ち止まって私達を見ると、
低い声で言った。

「俺達の手伝いをしてくれるなら、
 タダで泊めてやろう。」
「何か用ですか。」
兄弟が、姉妹の前に立ちふさがる。
 
「住む所がないんだろう?
 俺達にはある計画があってね。
 東洋人が必要なのさ。
 お前達を住まわせてやるから、
 協力してもらおう。
 本当は五人必要だが仕方ないな。」
黒ずくめは笑った。

黒ずくめの言い分を整理し、
返事を考えるより先に、凛が手を打った。
「いいだろう。さぁ案内して。」