朝になるとおじさんに
都までの地図を書いてもらい、
すぐに出発した。
 
私は凛の隣を黙って歩きながら、
後ろを歩く風と楓の会話に、
さりげなく聞き耳を立てていた。

凛は私がかけた布については、
全く触れなかった。

地図の通りに進んで行くと、
屋台や香辛料の市場が見えてきた。
 
あまりに強いその匂いから
早く解放されたくて、
走ろうとする私を凛が止めた。
 
「走るな、また転ぶぞ。」
「大丈夫だよ。砂漠じゃないし……」
「いいから走るな。」


凛を見た。怖い顔……違う。
優しい顔、優しい瞳だ。
 
「分かった。」仕方なく鼻を抓む。
こうしていれば、
酷い匂いをかがなくて済む……

ところがそれを見て、
凛は腹を抱えて笑い出した。
 
「何がそんなに可笑しいのよ。」
「あんまり変な顔してるからだ。
他に方法ないのか?」
笑いが止まらないようだ。