結局その日の内に、
都に着く事は出来なかった。

夜中にそこから少し離れた
小さな町の外れに着いた私達は、
そこで会った心優しいおじさんに、
一晩泊めてもらう事にした。

「アレキサンドリアへ、ようこそ!
 東洋の客人よ。」

おじさんは笑って言った。
「沢山歩いたそうじゃねぇか。
 沢山食べて、ゆっくり休みな!」

おじさんが言うには、
沢山の異国の学者や使者が、
文化や知識を学ぼうと
この地を訪れていて、
私達のような異国の衣装に
身を包んだ人々で、
都はとても賑わっているらしい。

私達が宛がわれたのは、
小さな窓のある部屋だった。
 
ふかふかな藁の上に
布を被せたベッドが二つ。
姉妹で一つずつ使い、
兄弟は床で寝る事になった。

静かすぎる月夜……
私は楓の寝顔を見ながら
眠れずに起き上がった。
 
凛は部屋の隅で丸くなっている。
私は凛にそっと布をかけると、
横になって目を閉じた。