「最後、じゃないけど。これだ。」
凛は腕のブレスレットを
ジャラジャラさせながら言った。

「三か月以内に外さなきゃいけない。」
「取れないの?ブレスレットでしょ?」
凛は私をじっと見た。

「お前に外せる?」

私は訳が分からず、
ブレスレットを手に取った。

ぐるっと回して
繋ぎの部分を探してみるけど
見つからない。
 
思いっきり引っ張ってみても、
両手に痛みが走っただけで、
鎖はびくともしなかった。

「ほらな。スカイチェーンは、
 そう簡単には取れないんだよ。」
「スカイチェーンって?」

答えない凛を見ながら私は考えた。 
世の中には、秘密主義者だっている。

明るくなった。
私は池の淵に座ったまま
ぼんやりと夢を見ていた。

――お前、誰かによく似ているよ。
 そう言う凛の声を、聞いた気がした。
 
楓に起こされたのは午後だった。
体育座りでよく眠れるねと、
風が呆れている。