凛は素敵だと思う。
魅かれる所も沢山ある。
けれど心は氷の様に冷たくて固い……

それを溶かすなんて、とても無理だ。

目を覚ますと、辺りは既に明るかった。
楓はまだぐっすりと眠っている。

水で顔を洗い、
立ち上がろうとして氷ついた。

サソリだ。足元にサソリがいる……

叫びたくても、声にならない。
何もできない私の背後で音がした。
振り返ると、凛が林檎をかじっている。

私は必死に目で訴えたけど、
理解出来なかったらしく聞いてきた。

「林檎が欲しいのか?」
「違う。助けて……足元に蠍がいるの。」

凛は少し考えてから、
静かに近づいて来た。
ゆっくりと私を抱え上げると、
少し離れた所で降ろした。

「ありがとう……」
「こっちが悪さをしなければ、
襲って来たりしないさ。」

池の淵に座る凛の隣に
体育座りをすると、
手で水をくみ一口飲んだ。

「手紙に書いてあった、
 最後の鎖って何?」
思わず出た言葉だった。