家に帰る道

ワクワクして いたが 母になんて言おうか 悩んでいた


「 お母さん 友達のウチに行って

 紅白歌合戦 見てもいい? 」

母は 恐い顔を してはいたけど

許してくれた


トランジスタラジオ と 毛布をかかえて

夕暮れの 道を走った

母にウソを言ったのは ひっかかっていたけれど

大みそかの冒険の 期待感のほうが 大きかった


寺の前に 行くと もう みんな来ていた

「 遅ぇ~よ なにしてんだよ! 」

母に 言い出せなかったコトは 恥ずかしいから

黙っていた

荷物を 確認しながら

「 ラジオ 持ってきたか? 」

「 うん 」

「 テント は? 」

「 あるよ 」

毛布は それぞれが 持ってきていた


午後七時 真っ暗な 山道を登りはじめた