六月

梅雨入りした 山には ユリの花が咲いていた

風もなく 小雨に霞んでいる・・


いつもと同じ 帰り道

今日は 雨で傘さしてるから

遊ぶこともなく 寄り道もしないで

「 ばいばぁい 」

みんな まっすぐ家に帰っていった


ひとり とぼとぼ・・

温泉宿の前を歩いていると

おばあさんに 声をかけられた


「 ねぇ ボク ユリの花を採ってきてくれる?

    お小遣い あげるから 」


「 うん いいよ 」

お小遣い に 胸が弾んだ

家に帰ると 玄関にランドセルを放り投げ

そのまま 外に走り出た

「 どこ行くんだい あんたは! 宿題は! 」

返事もせず

山に 登った