手にした本をぺらぺらとめくっていたその時

「あれ、先輩?」

聞きなれた声が聞こえた。

顔を見なくても分かる。

「斗亜くん!」

そこには普段あまり見られない制服姿の斗亜くんが立っていた。

あの出来事から、以前より少しだけ、斗亜くんが心を開いてくれた気がする。

ま、勝手にそう思ってるだけだけど。

ゆっくりと近づいてくる彼。

そして私の前で立ち止まると、私の唇にソット人差し指を添えて

「ここ、図書室なんだけど。」

「静かにしてよね?」と言って軽くため息をついた。