たった一言、これだけは聞いて欲しかった。

「斗亜くん、ありがとう!」

「......っ!なにそれ...」

斗亜くんは何かを感じたのか、表情を変えていたけど。

私は出来るだけ笑顔で、涙をこらえるので必死だった。

「またね。」

私はもう一度斗亜くんに微笑むと、部室を後にした。

でも、もしも叶うとしたら、一度だけでいい。

「....好きって、言いたかったっ」

本当に伝えたい言葉だけは、最後まで伝えられなかった。

私は歩く足を止め、そっと木の陰に座り込んだ。

きっと、あの手紙を読んだんだろう。

斗亜くんの私を呼ぶ声が、すぐ傍で聞こえてきた。

出て行きたかった。

私はここに居るよって、叫びたかった。