そんな斗亜くんを見ていたら涙がこぼれそうで、

私はキュッと唇をかみ締めて笑顔を作った。

「違うよ。今日は用事があってきたの。」

「......。」

「今日はね、これを斗亜くんに渡しに来たの。」

「?なにこれ....」

不思議そうにそれを眺める斗亜くん。

「それを渡したら、またすぐに帰らなくちゃいけないから。」

今日は、どうしてもこれを斗亜くんに渡したかった。

下駄箱に入れておこうとも考えたけど、やっぱり直接渡そうと思った。

最後に笑顔で、斗亜くんとお別れしようと思った。

今日が最後だってことは、誰にも言わなかった。

でもきっと、大河は気づいていただろうな。

ああ見えて、ちゃんと、誰よりも私のことを見てくれているから。

そう思うと少しだけ、笑顔になれた。