俺は眠っている藤原にそっと近づくと、彼女の顔を覗き込んだ。

呆れるくらい無防備に熟睡している。

あんまり人が来ない場所だからって油断しすぎ。


投げ出した右手の先には、本のページが風に吹かれてペラペラとはためいている。

本を読んでいる途中に寝てしまったんだろうなってことが容易に想像できた。


俺は呆れながらその本を拾い上げ、タイトルを読む。

「『脳死がわかる本』……？」


瀬尾が俺の肩越しに本を覗き込んできた。

「何、文系と見せかけて、実は藤原も医学部目指してたりすんのかな？」

「さぁ？」