そっと病室に入り、後ろ手で扉を閉めた。

見慣れた病室のベッドは空っぽで、いつもそこで眠っていたおじさんの姿がなかった。


病人のいない病室はさらに殺風景で、とても広く感じる。

妙にそわそわして落ち着かない気分になり、部屋じゅうをぐるりと見回した。


視線がソファの前で止まる。

藤原が丸くなって眠っていたからだ。

制服を着ている。

昨晩、ここに泊まったのだろう。


俺は足音を立てないよう、そっとソファの傍まで行くと、

床に落ちていた毛布を藤原に掛け直し、サイドボードに花束を置いて病室を出た。