「俺は――藤原んちの家の事情とか全然分からないけど、大事なのは藤原がどうしたいかだろ?

藤原の中で、大学に行きたいって気持ちが少しでもあるから悩むんじゃないの?」

藤原が顔を上げて俺の顔をじっと見た。


「経済的な理由で悩んでるなら奨学金とか……なんか方法はあると思う。

藤原は頭いいんだから、こういうときこそ使わないでどうすんだよ」

「うん……」


俺は鞄の中から学校でも予備校でも使っているクリアファイルを取り出し、

その中に挟んだままになっていた、折れ目だらけの進路希望調査の用紙を藤原に渡した。


「とりあえずこれ、ちゃんと出せよ」

「――これ、どうしたの?」


「イチョウの木に刺さったままなのが気になって、ちょうど教室の前通りかかった用務員さんに頼んで取ってもらった。

ガキみたいなことするなって、すっげー怒られたけど」