俺と藤原は病室を出た。

二人とも黙っていたので、人気のない廊下にひたひたと足音だけが響く。


その重苦しい沈黙を破るように、突然、藤原がぷっと噴き出した。

「”藤原さん”だってー。森本から”さん”付けで呼ばれたの初めてじゃない?」

「んだよ。挨拶なんだから、普通、そう言うだろ」

「そうなんだけど、おかしいなぁと思って」


俺たちは中庭に出ると、遊歩道沿いにある木のベンチに座った。

さっきより日が高くなっていて、ポカポカと暖かい。


俺はすぐ側の自販機で缶コーヒーを二本買い、一本を藤原に渡した。

藤原は「ありがとう」と言って受け取った。