おじさんは、夏休み最初の週末、職場で倒れた。


休日だったので同じフロアには他に人がおらず、

見回りに来た警備員に発見されるまで、少し時間が経っていたらしい。


発見されたあと、すぐに救急車で病院に運ばれ、何とか命は取り留めたものの、

それから一度も意識が戻っていない。


もう三ヶ月も昏睡状態が続いており、この先どうなってしまうのか、誰にも予測がつかないのだそうだ。


「藤原のおばさんは?」

「仕事。夕方に来るって言ってた」

「……そっか」


こんなとき、瀬尾みたいに何か気の利いたことでも言えたらと思うけど、

俺の口からは、そんな簡単にさらさらと言葉は出てきてくれない。


藤原はおじさんの骨ばった右手にそっと触れ、上から布団を掛けなおした。

「ね、外行かない?」

「あ、うん」