「違う違う。ここ、うちの父親がやってる病院なんだ」

俺は慌てて藤原の勘違いを否定した。


「あぁ、そういえばお父さんがお医者さんだって言ってたよね。すっかり忘れてた。

ね、立ち話もなんだし、よかったらどうぞ」

「俺、お見舞いの品とか持ってないんだけど」

「はは。そんなのいらないって。どうぞ」


俺は藤原に導かれるまま、フラフラと病室の中に足を踏み入れた。


すぐ正面にサイドボードとベッドがあり、その奥の大きな窓に沿って二人がけのソファが置いてある。

サイドボードの上には家族の写真と、淡いピンクの花が飾ってある。


「お父さん、学校の友達がお見舞いに来てくれたよ」

藤原が枕元に顔を寄せ、ベッドに横たわるおじさんに話し掛けた。