「智史」

聞きなれた声に振り返ると、白衣姿の父さんが立っていた。

近藤さんは父さんに一礼すると、ナースステーションの奥に戻って行った。


「はい、これ」

俺は鞄の中から大事なデータが入っているというメモリを取り出して、父さんに渡した。

「悪いな。うっかりしていたよ」


「いいよ、予備校行くときの通り道だし。……ところで藤原の父親って何で入院してんの?」

「……藤原さんと知り合いなのか?」

「同じクラスなんだ」

「そうか……」


近藤さんだけではなく、父さんまでもが眉間に皺を寄せ、苦々しい表情に変わった。


俺は、勇気を出して、恐る恐る聞いてみた。

「……この前、藤原が屋上で脳死の本とか読んでたんだけど、何か関係あったりするの?」


父さんの眉間の皺が深くなった。