田代はうちのクラスの担任で、生徒に頭が上がらない、気の弱い二年目の数学教師だ。


特に女子の集団を苦手としているのが傍目にもよくわかる。

確かに女子怖いけどさ、オドオドしすぎなんだよ。


だから進路希望調査みたいな大事な紙まで紙飛行機にされたりするんだ。


うちの高校は一、二年とクラス替えがなく、三年から進路別にクラスが分かれる。

今回の進路希望調査は、その参考にするのための大切なものだった。


「森本はやっぱり国立理系クラス?」

イチョウの木に刺さった紙飛行機に視線を固定したまま、藤原が聞いてきた。

「うん。藤原は国立文系なんだろ?」


藤原は曖昧に笑った。

こんな中途半端で頼りない表情をした藤原を見たのは初めてで、俺は何だか体がむずむずして気持ち悪かった。