もう一度寝ようと閉じた目を、ゆっくりと開ける。
「伊緒?」
「せんせ…」
さっきより明確に動きだした頭は、今いる場所をハッキリと認識した。
目を閉じても開いても変わらない暗さに、微かに聞こえる音楽。
私と少し距離を置いて隣に座っている先生。
身体には、椅子と私を固定するベルト。
ここは、間違いなく先生の車の中。
でも、確か私はあの喫茶店にいたはず。
先生が迎えにきてくれて、車まで運んでくれたのかな…?
「おはよう、伊緒。よく眠れた?」
そう言って私の顔を覗き込む先生は、少しニヤッと笑っていた。
「…先生のいじわる。」
きっと、ずっと寝ていた私の事をからかっているのだろう。

