先生と教官室2〜新しい道〜






「じゃぁ、実力テストでいい点とれたらデートな。」





「えー、またその条件ですか?」




前もそんな約束させられた覚えがあるなぁ。




「その方がテスト頑張れるだろ?」




「うっっ!!!」




「あの時も頑張ったし、なぁ?」




不適な笑みがなんとも憎たらしい!!




でも、でも…可愛いから嫌いになれない…。




「もーっ解りました!!頑張ります!!」




完璧に先生に負けた私は、テストでいい点をとる約束をした。




無謀な気もしないでもないけど…貴重なデートのために頑張りますか…。





「ん、よくできました。じゃぁこれは前払いって事で。」





「えっ!!?え、えぇ!!?」





「うるさい。」




「!!!!!!!!」




唇に優しい感触が伝わった。










「キャ―――――!!!」




「「!!!!!???」」




伊緒にキスをした瞬間、背後から寄生のような甲高い声が響いた。




やっべ、もしかして…。




「一発気合い注入しましょうか?甲田先生。」




「わっわっうわぁっ!!!」




「横井さん落ち着いて下さい。」




あーあ、見られちゃったか。




しかも、よりによってキスの瞬間を…。




「誰かに見られたらどうするんです?」




「ははは…鍵は閉めてあるけどな。」




「…まぁその話しは後ででも。とりあえず二人を門まで送っていきませんか?」




「ん?あー、そうだな。」





放課後から話していたのに、時計はすでに六時を指していた。












「伊緒、そろそろ…って、あれ?」




固まってる。




驚いた顔のまま…。




しかも、伊緒の視線の先にいる横井まで。




進藤先生の顔を見ると、進藤先生もその光景に気づいたみたいで、少し困った顔をした。





いやでも、この光景…。




「…ふはっっ」




「…あははっ」




相当笑えるんだが、抑える方法が解らない。




たまらず二人で吹き出してしまった。






「…何で笑ってるんですかぁ!!!」





「こんの変態バカ教師ぃぃぃぃ!!!!!!」









いつも一緒にいるからか、二人はよく似ている。



笑いのツボや怒るタイミング、好みもよくあうと伊緒が前言ってたな。




まぁだから仲がいいんだろうけど。




「もう先生なんて知りませんから!!恵那帰ろっ!!」




「あ、うん。…進藤先生、今日はありがとうございました。失礼します。」





「いえ、僕の方こそありがとうございました。また明日教室でね。」





「はい!!さようなら!!」





お、進藤先生と横井が更にいい感じになっているじゃないか。




ちゃんと話しできたんだな。




二人ともいい顔してるし、もう安心していいみたいだな。









「門まで行きましょうか。」



「いえ、ここで大丈夫です。では…」



来た時は、見てられないような悲しい笑顔だったけど、今の横井の笑顔は幸せに満ちてるようだった。



それに比べて…。



「さ・よ・う・な・らっっ!!」


あー…完璧に怒らせてしまった。



まぁ人にキスシーン見られた上に笑われたら怒るよな…。



「なぁ、おい。伊…」




バタンッ!!!!





乱暴に閉められた扉に少し同情。



俺のせいなのに…何かごめんな。




「甲田先生、コーヒー飲みます?」










進藤先生の声と水の音に気づいて振り向くと、コーヒーをいれる準備をしている姿が目に入った。



なんたる切り替えの早さ…流石だな進藤先生よ。




「甲田先生?聞いてますか?」




「ん?あ、その…俺はいいかな。さっき飲んだし。」




「そうですか。」




俺の気のせいだろうか。



進藤先生の表情が柔らかい。




昨日はあんな暗い顔でうなだれていたというのに。




横井もそうだが、大切に思っている相手と分かり合えたというのは、人をここまで変えるんだな。




「なぁ進藤先生、横井とはどうなったんだ?」





「えっ…いきなりですね。」





「まぁまぁ。いいだろ?教えてくれても。」






だって、気になるじゃないか。




進藤先生にとって、いつのまにかそんなにも大切になっていた横井とのこれからを。





逆に聞きたがらない奴なんていないと思うけどな。











「自分の事を話すって何かむずがゆいですね…。」




「はははっ、俺はいつもそうなんだぞ?」





苦しみを人に話す時は、ただ助けてほしいという気持ちで一杯で、感情もあまりないけれど、喜びや幸せを話す時は何か胸が高鳴ってむずがゆくなるんだよな。





「ふぅ……。」





コーヒーをいれ終えた進藤先生は、ゆっくりと向かいにあるソファーに腰掛けた。




ソファーの間に置かれた机の上にあるコーヒーから、ふわっと良い香りがする。





この匂いを嗅ぐと、ついコーヒーを飲みたくなる。





こんなんだったら進藤先生に一緒にいれてもらえばよかったかな。






「…やっぱりコーヒー飲みます?何か欲しそうな目してますけど。」





「あー…いや、それは事実なんだけど。我慢する。」





もし今、進藤先生か俺がコーヒーをいれにいったら、話しが遠のいてく気がするし。





「俺の事はいいから。で、二人はどうなったんだ?」













コーヒーを一口。




深呼吸を一つ。




そして、進藤先生がゆっくりと話し出した。




「僕は、甲田先生みたいに器用な恋愛はできません。まぁそれは経験が少ないだけなのかもしれませんが…。」




器用な恋愛なんてしてるつもりはないんだけど…回りから見たらそう見えるのだろうか。





「じゃあ、横井の事は諦めたのか?」




二人のあの笑顔はただの空元気とでも?





「ははっ、何言ってるんですか?」




「…え?」





「やっと見つけた、こんなに大切に思える女性を簡単に手離したりはしないですよ。」





自分の事じゃない。




これは進藤先生の恋愛話しなのに、何故だか自分の鼓動が速くなっていく。




「ゆっくりと大事にしていきたいんです。だから、今は見ているだけでお互い我慢しようって。」





スピードをおとす事のない鼓動は、俺の胸を締め付けてくるようだった。










男の俺にも伝わってくる進藤先生の魅力。




きっとそれが鼓動を速くしているんだろう。



感心するところでもあるが、少し憎かったりもする。




「ということは、二人の恋はまだ始まってないのか…。」




ため息まじりにそう呟いた俺の言葉を聞くと、進藤先生はゆっくりと首を横に振った。





「始まってますよ、片想いが。」




「…あぁ。ははっ、そうだな。」




両想いだけが恋なんかじゃないもんな。



むしろ、片想いの方が本当の恋愛というのかもしれない。




一緒にいられない分、相手への気持ちがどんどん膨らんで、でも伝える勇気はなくて。




苦しいけど、充実した気持ちになれる。





そりゃ両想いが一番幸せだけど、片想いの時にしか感じられない幸せもあるんだよな…。