「お父様、お母様……二人は本物のお父様とお母様じゃない……」



陽子さんが持っていた私の荷物を床に落した。

お父様もお母様も目を見開いた。
驚いて物も言えないって感じだわ。


やっぱり、二人とも私がそのことを忘れてしまっていると思っていたんだわ。



「私、全部覚えているわ。どうしていつも傍にいてくれなかったの! 柏原だけじゃない! 私のこと心配してくれているのはっ!」




また涙が出てきた。

手の甲で涙を拭う。



柏原がいたら、優しい指先で拭ってくれるのに。