「茉莉果様は、いつだって私の常識の範疇を意図も容易く越えてゆく。それに、こんな事件に巻き込まれてしまっては執事とお嬢様としての我々の関係になんらかの障害が起きそうで心配だ」



あの月夜の寂しすぎる微笑み……



「いつだって……一人足掻くのは私の役目ですから」


「柏原……?」


私は名前を呼ぶ事しか出来ずに、金縛りにあったように生唾を飲み込む。


そして執事を見つめ返した。


その瞳は、漆黒の宿りを見せ私を飲み込んしまいそうなのに……いつも見えない何かと戦っている。





「屋敷に、帰りましょうか。お嬢様」