胸を締め付けられるような優しいキス。
世界で一番大切にされていると、錯覚してしまうほどに優しいキス。
本当に、私の執事は何を考えているのかサッパリわからない。
「ありがとう。大好きよ柏原」
柏原を、安心させてあげたい。
「ええ……本当に。もしかしたら、貴女は私がいなくてもご無事だったのかもしれません……」
でも、聞こえてきたのは冷たい声。
「犯人の目を、欺く為に私が仕掛けた"茶番劇"も貴女には必要なかったかもしれない」
更に、冷たくなる声。
「まったく今度は、なによ!」
艶っぽい唇が、離れていくと歪に微笑んだ。
ゾクリと、背筋に冷たいものが走る。