その執事は、捨て犬みたいだと思ってみたけど……美しい横顔は、やっぱりどこか威圧的だ。


まるで、「拾ったら損はないぞ」と自信ある捨て犬のようだ。




「叱られないわよ」


「少しだけ旦那様と電話で会話をしましたが、酷く困惑したご様子でした。大切な貴女が、強盗の人質になったなど……仕事を切り止めて日本にご帰国なさるようです」


「お父様が?」


困ったわ……
お父様が、混乱して帰ってくるほど、ひげ面は大切なお客様だったのね?



「でも、大丈夫よ。柏原はよくやってくれたわ。お父様にも、そう伝えるから大丈夫」


捨て犬は尻尾を振りながら、私の肩にオデコをトンっと置く。




「御慈悲に感謝いたします……貴女がご無事でなりよりです」


「柏原……」


何気に、可愛いわ……

ワンワンプレイね?
執事の頭をナデナデしてからギュッと抱き締める。





甘いジャスミンの香りを、漂わせて執事は私の背中に腕をまわした。





「貴女を守りたかった……死ぬ気で、貴女をお守りしようと思った」




柏原はそう囁くと、私の唇を奪う。