どうしよう。
私、注意深い人間なのに!

なんてことなの……


津田さんは、苦味の強いホット烏龍茶を手渡して「もう大丈夫だよ。顔いろが悪いけど……安心して」と言う。



苦いわ! このお茶!

こんなもの飲めないわよ!やっぱり私は津田さんとは、いれないわっ!


お茶の好みが、違う男性と幸せになれるとは思えないもの!


「あのっ! いい加減に……」
「お嬢様!!」

「あっ……柏原!」




綺麗な黒髪を靡かせた私の執事。

「警視庁」というテロリストを、恐れもせずに私を助けにきてくれたのね。



「遅かったじゃないの!」


柏原が津田さんに、深々と頭を下げる。


「茉莉果さんの、執事さんですか? あれ? 撃たれた傷は……」

「主人がお世話になりました。傷の手当ては、していただきました。ありがとうございます」


殴られた跡に、白いガーゼがあてられた執事。


「お嬢様。お迎えに上がりました」


膝をつき、右手を垂直に敬愛の姿勢をみせてから……私に深く頭を下げる。


「屋敷に戻られますか? それとも、貴女に相応しいホテルのスイートルームを用意いたしましょうか?」


ホテル?
スイートルーム……

うーん。
でもチョコフォンデュ……


「屋敷では、しばらく数名の捜査官が取り調べを行います。茉莉果さんのご両親に連絡がつきまして、捜査に協力いただけるようでしたので」


津田さんは、申し訳なさそうに柏原に伝える


「承知しました。我々も、捜査には協力いたします。犯人達は、屋敷内で暴行、脅迫、窃盗、殺人未遂、監禁……沢山の法を犯しました。ですが……」


執事は、ニコリと微笑む。

「しばらく、お嬢様と二人にしていただいてもよろしいですか?」


津田さんは、無言で頷くとキャンピングカーから出ていく。




沢山積まれた機材のモーター音だけが響く車内。