笛の音が鳴り響き試合が始まったようだ。


 試合はとても白熱していて、応援に来ていた観客達もすごく盛り上がっていたけどボールを奪い合ってどこが楽しいのか私には理解できない。


 私には、柏原がどこから取り寄せたのかアンティーク調の布張り椅子が用意された。椅子がなかったら柏原を椅子にするつもりだったのに、あらかじめ私の考えをよんだのね。


 冷たいフルーツティーを飲みながら、スポーツ観戦が出来たので文句はないけど、退屈だ。





「お嬢様、起きてください。試合が終わりました」


「え? 寝てないわよ? でも、あっという間だったわね。柏原、あなたはここで待っていてちょうだい」


 試合が終わり、汗を拭くイケメンのナツへと狙いを定める。
 
 柏原が付いてくると、邪魔しそうなのでその場で待つように命令する。


「ちょっとお時間いただいてもいいかしら?」


「ん? なに?」



 間近で見る彼は、遠くで見るよりも数百倍カッコいい。声が意外と男らしく私の鼓動を早めた……


 絶対に逃さないわ!



「この後、少しだけお時間いただけないかしら? それなりのお礼はさせていただくつもりよ」


「あんた……誰?」


 ナツは、興味のない顔で私を見ると履いていた運動靴の紐を解くのに忙しい様子だ。


 私の事知らないの?


 わかったわ……

 知らない訳じゃないけど、わざと知らないフリをしているのね?

 ひょっとしてナツって俗にいう"ツンデレ"ってやつかしら?



 面倒くさいわね。