────キッチンで洗い物をする柏原を頬杖をついて眺める。

自分の部屋に戻ってもいいのだけど柏原が「お嬢様に、お話がございます」と言うのでここで待つ事にした。


「何怒ってるの?」


「ご自分でお考えください」


わからないから聞いてるんじゃない……


柏原が手を拭きながらキッチンから出てくる。


「お疲れ様」


すると、柏原は私から携帯を奪う。

電源を切って、大きなダイニングテーブルの真ん中に置く。


「ちょっと……なにするの?」



携帯に手を伸ばそうとすると、その腕を押さえつけられる。


「……柏原!?」


体がふわりと浮いて、執事に抱き上げられていた。



「わっ……下ろしてよっ!」


下から見上げた柏原は、無の表情だ。
人の話を聞いていないどころか、サイボーグ以外の何者でもないみたい。



でも、これは俗に言う『お姫様抱っこ』というやつかしら?

せっかくなら、もっと甘いシーンでしてもらいたかったなぁ……



というか、まず私はどこに運ばれているのかしら?


「貴女は、いつ抱き上げても軽い。もう少し、食事の量を増やしましょう」


「ひょっとして、体重測定なの?」


「ええ、似たようなものでございます」


セカンドフロアーへのメイン階段を上る執事。

いきなり体重測定をするなんて気紛れな執事ね。