『ああ。よかった。楽しみだなー、オーストラリアの話いっぱいしようね』
「ええ……そうね」
私と竜司の共通点は、オーストラリアの話しかないものね。
『じゃあ、十時に迎えに行くから』
「えぇ……」
私の家を、知ってるのかしら?
『何かあったら電話してね?』
「ぇぇ……」
お願いだから、はやく電話を切って!
『おやすみなさい』
「……ぇ……ぇ」
そこでコアラとの通話が終了する。
「お嬢様」
「……ぇ……ぇ?」
冷気を発する執事。
視線を合わせたら、氷になってしまうかもしれない。
「お嬢様は、誘いを断るという事をご存知でしょうか?」
「…………ぇ?」
甘く冷たい執事の囁きですら、聞くものを氷にするような魔力があるのかも。
現に私は逃げ出す事も、抵抗することもできずに氷のように固まった。