「あの、私、何て言っていいか、その、小学校の時、あなたをひどく傷つけてしまって。それで最近気になって仕方なくて、その謝りたくて....」
 
 友美子からまだ何も言ってこない。とてつもなく重たい沈黙が正確には2分ほどあったが、麻由美には1時間にも2時間にも感じられる。
 
 「今さら、だよね?あはは、何言ってるんだろ、私。ごめんなさい、こんな電話しちゃって。でもどうしても謝りたかったから。本当にごめんなさい。またどこかで見かけたら声かけてくださいね。それでは.....」
 
 麻由美は自分が言いたい事だけを言って早々に電話を切ろうとした。その時、
 
 「待って、突然で驚いたけど、謝ってくれてありがとう!どこかでなんて言わないで、今はどうしているの?ぜひお会いしたいわ。」
 
 友美子が明るい声で聞き返してきた。麻由美は今までの動揺がどこかへ行ったような気になり、
 「ありがとう、許してくれるのね。そうね、会いましょうよ!私今、夫婦で喫茶店をやっていてね、それから.....」
 
 電話のやり取りはしばらく続き、麻由美は友美子と次回会う約束まで取り付けれるようになった。 
 麻由美は電話を切ってから嬉しくなって鼻歌まじりで店に戻り、良樹に不思議がられて
 
 「何だ?さっきまで暗い顔してたと思ったら。」
 そう言ってきたので、
 「うん、ちょっとね。」
 
 麻由美の鼻歌はしばらく続いた。