麻由美は取り残されたように突っ立って呆然としてしまっていた。
 そこへ美紗が走り寄って来た。

 「ママ、早紀ちゃんのママと話してたでしょ、何か言ったの?」
 美紗は不安げに訊いてくる。
 「ううん、何も言ってないよ。で、どうなの?あれから。」
 母親なら誰でもその後が気になる所だ。麻由美も例外ではない。
 
 「う、うん、大丈夫。」
 麻由美には美紗の顔がやや曇って見えた。するとそこへ
 
 「美紗ちゃんのママ、こんにちは!」
 元気な挨拶が聞こえて来た。早紀だった。
 麻由美はどう対応していいか迷ったが、すぐに
 「こんにちは、早紀ちゃん。いつも仲良くしてくれてありがとうね。」
 とありきたりの事を言った。早紀は
 
 「当たり前じゃーん、ねーーっ、美紗ちゃん!」

 麻由美はぞっとしてしまった。
 なぜなら、自分も同じ事を言った覚えがあったからだ。
 こんな歳になって覚醒してしまうとは夢にも思わなかった。