「ねぇ、パートのことなんだけど....」
 良樹は気のない返事をしてきた。
 「パート?特に募集してなかっただろ。どっかから話があるのか?」
 「そうなの、この間会った同級生が今仕事探しているんだって。で、どうかなって声かけてみたんだけど、一回会ってくれないかな。」
 
 良樹はソファーに横たわっていた体を起こし、
 「そうだな、ちょっと人の手も必要になってきたもんな。いいよ、いつでも連れて来なよ。」

 良樹はあまりいろんなことを根掘り葉掘り訊いてくるタイプではなかった。それも助かっていたのか、話はあっという間に進んでいった。
 
 そして友美子が働く日がとうとうやって来たのだった。

 「おはようございます、今日からよろしくお願いします。」
 友美子は初々しく頭を下げた。
 「よろしくね、友美子。自分のうちだと思って気楽に働いてね。」
 「ありがとう、嬉しいわ。」
 良樹がカウンターの奥から声を掛けた。
 「あまり最初から無理しないでね、ぼちぼちやってください。」

 面接の時、麻由美はお茶の用意をしに少しの間奥に入っていった。
 その時の談笑があきれるほどよく聞こえて来て、初対面とは思えないほど友美子と良樹は気が合っていた。
 麻由美は少し驚いたが、
 「まぁ、固くないってことでいい感じよね。」
 と一人ごちて、入れた紅茶とクッキーを二人の所へ持って行った。