麻由美と良樹は結婚してまる9年、美紗が先に出来てしまった、いわゆる「でき婚」だった。
 短大1年の春にすでに社会人だった良樹と出会い、その冬には美紗を身ごもった。
 
 当然お互いの家族はすんなり賛成というわけにはいかなかったが、良樹の猛烈な説得により、なんとか許してもらったのだった。
 
 その時の良樹の熱さに麻由美は感動したものだったが、結婚して9年も経つと、人はやはり変わるものだと最近思うのだった。
 
 だからといって良樹のことを嫌いになったりはせず、お互いの気持ちを尊重し合う夫婦をこれからも望みたいと麻由美は思っていた。
 
 しかし最近の良樹ときたら、少々だれ気味で、開店ぎりぎりでないと起きてこない。軌道に乗って来たのはいいけれど、店主がこうでは良くないな、と少しばかり不安な材料ではあった。
 
 麻由美は新しい風を吹き込む意味も込めて、友美子のことを良樹に早速話してみようと思った、もちろん、過去のことは伏せてである。