「ねぇ、実は今うちの店でパートを募集しているの。忙しいランチタイム前後なんだけど、もしよかったら来ない?」
 
 もっと近づいて時間を重ねれば、彼女との距離が縮まるかもしれない、そう麻由美は思った。
 
 「え?パート?...そうね、面白いかもしれない!やってみようかな。」

 友美子は意外にもあっさり快諾しようとしている。
 
 「帰ったら主人に早速話してみるわ、決まったら電話するから!」
 「でも、私、喫茶店とかってやったことないのよ、大丈夫かな。」
 「大丈夫よ、私がやってるんだから!」
 「あは、そうね、そうよね!」
 
 二人は顔を見合わせて笑い合った。
 店内に響くほどではなかったが、隣のカップルにちらっと見られてしまった。

 麻由美は、これで借りを返せるような、もしかしたら優位に立てるようなそんな淡い期待を寄せ、過去を洗い流したいと考えたのだった。

 お互いの携帯情報を交換し、その日はここで別れた。