「ねぇアズサちゃん、20年後の私たちってどう過ごしてるのかなぁ?」

「20年後?27歳じゃん!おばさんだね。お母さんとかしてるのかな?アヤちゃんは?」

「全然わからないや。」
2人は今池のガードレールにもたれながら話した。蝉が鳴いてるような、トンボが飛んでるような季節の変わり目の空だった。

私とアズサちゃんは家を5つ挟んだ幼なじみ、とは言ってもアズサちゃんは1ヶ月前に遠い親戚に引き取られ、転校してきたばかりだった。


私は家に帰って、洗濯を取り入れ晩ご飯の支度をした。私の父親は一年前に借金を残して蒸発した。大人たちは必死で隠そうとしたがそんなもの、子ども心にわかっていた。もちろん知らないフリをしていた方がいいことも。


大人といっても母親、年の離れた、かっこいい兄貴、2人の結束は強かった。専業主婦だった母は借金返済の為、寝ずに働いた。兄は自分の学費は自分で稼ぎ、高校に通った。


「家で働いてないのはお前だけ!お前が家事をするのが当たり前だ!」
「普通の子と一緒にされては困る!あんたは普通じゃないのよ!」

愛情に飢えていたのではない。たくさんの愛情の中育ったのだと今なら思える。しかし7歳の私の目には色のない世界を作った。


いつものように一人の夜を過ごしていた。

ドンドンドンドン

玄関を開けると怖そうなお兄さん、
「姉ちゃんお父さんおるか?」

「いないよ。」

「お母さんは?」

「いないよ。」

「なんや孤児(みなしご)ハッチになってもたんか?!」

怖そうなお兄さんは家に入り、辺りを見渡して、私の腰をつかみ、ズボンを下ろした。

「次はこんなもんじゃ済まんで。お母さんに言うときや。ハハハ」


怖いとか、ビックリする感情とは全く違う「無」だった。若干7歳、私は「無」を覚えた。