白い腕が、食事の載ったトレイを突き出した。

「…なんだ。」

小さく、ギリギリ相手に伝わるくらいの声で聞いた。

「食事。食べますか。」

「…いらない。」

今度は先程より少しはっきりと、言うと、少女はそれ以上話すことがなくなって困ったのか、数秒食事を見つめたあとに、

「…いつも食べないの?」

聞いてきた。

「…大体は食べない。」

短く答えた。
食事については完全に拒食とまではいかず、たまに思い出したかのように空腹感が訪れるから、たまにほんの少し口にする。
最近いつ食べたかといえば…覚えていない。

少女がこちらを何か言いたげな顔で見つめた。
唇をひきむすんで、軽い上目使いで。
…彼女はこんな顔しなかったなぁ。思い出す彼女の顔は、とても楽しそうなあの微笑みと、それから…。

思い出しかけて目を閉じた。

「向こうのお部屋。掃除するから。」

いまだにベビードールだけを着ているので剥き出しになっていた足から目をあげた。

トレイを持ったままで、先程のあの我慢するような顔を浮かべたまま、もう一度「するから。」と今度はもう少し強めに言って少女は出て行った。

…またすぐに散らかるぞとは言えなかった。