「…俺は君に何かを求めているわけではないから、ここにいる間は好きにしてくれて構わない。」

つまりは、自分に干渉しない程度で勝手にやって貰いたい。
それが男の要求だった。

手足こそ縛られていないものの、飛び降りれば痛いでは済まない高さにあるこの部屋では、監禁されているのと同じようなものだ。

好きにしてくれと言われても、特にすることなど見つからない。

散らかった部屋をしばらく見つめる。

「お掃除かな…。」

ポツリと呟くも、どこから手をつけていいものかがわからずにいると、

グー…

自分のお腹が鳴ったことで初めて空腹に気がついた。

そういえば彼は、紀一さんが食事は運ばれてくると言っていた。

思い出して、とりあえず玄関に行ってみると、ラップに包まれた二人分の食事が置きっぱなしにされていた。

ひとつを手に持ち、しばらく考えて、もうひとつも手に持って部屋に戻った。