「義理チョコ。って言ってもクッキーだけどね。皆に渡したんだけど、沖田君には渡す暇なかったから。彼氏に焼いた分の余りで、形もあんまりよくないけど、よかったら貰って」


「マジで? ありがとー」


 俺はなるちゃんの義理をありがたく受け取った。


「あ、行かないと。じゃあね、沖田君」


「うん。バイバーイ」


 手を振って、なるちゃんと別れて、俺はクッキーをダウンのポケットにしまって、携帯を取り出そうとした。


 俺も急がないと。ナツにも電話しないといけないし。


 そう思った次の瞬間だった。


「あ! ナツ!」


 ふと向いた方向に、ナツがいた。俺は目があったと同時にナツの方に走った。


「ナツ! 何でここにいんの?もしかして迎えに来てくれた?」

 ナツがここにいるなんて思いもしなくて、俺は驚いて聞いた。


「……うん」


「あ、ごめんな? 今日、夜からの奴がインフルエンザで急に来れなくなったらしくてさ、バイトの時間延びたんだ」

 俺はとりあえず遅くなった理由を話した。


「そうなんだ」


「でも嬉しー。ナツがわざわざ迎えに来てくれるなんてさ」

 本当に、嬉しい。ナツがここまできてくれるなんて。


 ナツも、早く俺に会いたいって思ってくれてたのかな。


「んじゃ帰ろ♪」

 俺はいつもの通りにナツを手を繋ごうと手を伸ばした。

 ナツが俺の手を握ってくれて、俺達は歩き始めた。