「おいで」


背中を向けた遠藤さんが寝室のドアのノブを回して、ドアが開く。


私の視線の先には、ドアの隙間から見えるベッドルームがある。


胸が熱くなる。


鼓動が激しくなる。


この部屋で遠藤さんと愛し合うんだ。


想像すると興奮して顔が上気してきた。


のぼせを冷まそうと飲むため手にしていたグラスのウーロン茶を少しテーブルにこぼしてしまった。


足が地に着かない私を見て、遠藤さんがフッと笑って優しい口調でこう言った。


「まだ早いか。薫ちゃん、焦らなくていいよ。待つから」


待たなくていい。


私はソファから立ち上がった。


そして、遠藤さんに歩み寄る。


「して」


自分でも破廉恥だと思う言葉を吐息と共に漏らす。


そうして、遠藤さんの首に腕を絡めた。


「私は、いいよ」


「薫ちゃん……」


「して、遠藤さん」


二度も言わせないで。