自分勝手な私を許して。


優は絶対、誰かと幸せになってね。


こうして、優と別れることになった。


▼ ▼ ▼ ▼ ▼


携帯電話と睨めっこを何十分も続けていた。


ベッドの端に腰を沈めて携帯を手に持っていた。


窓の外の向かいのマンションの真正面の部屋からは灯りが漏れていた。


チクタク、チクタクと部屋の掛け時計から秒針の刻む音が聞こえる。


室内は夜の静寂に包まれている。


私は携帯のメインディスプレイにアドレス帳を表示させていた。


遠藤さんの名刺には、本名「遠藤葵」と書かれてあって電話番号もアドレスも記されていた。


それを登録したのはいいけれど、遠藤さんに電話をかける勇気がない。


いざ、通話ボタンを押そうとしたら気後れしてしまって押せない。


何を恐れているんだろう?


「連絡する」と言ったのは私なんだから、連絡しなかったら変に思われる。


でも、迷惑だったりして電話をかけたら怒られるかもしれない。


今日の出来事を報告するだけじゃない。


何をためらっているの?


早く電話しないと遠藤さんが寝ているところを起こすことになる。


そうしたら、嫌われる。