「はー」


しばらくして、メロンソーダが優の目の前に置かれると優があからさまに大きなため息を吐いた。


カフェオレを飲み干してストローで氷をかき回していた私は上目遣いで優を見た。


言いたいことは、わかっている。


たぶん、優の口から発せられるのは私にとって不快なことだ。


「あいつが好きなんだろ?」


優の声音はいつもと変わって沈んでいた。


もう諦めたといった風にも聞こえた。


「あいつって?」


「とぼけるなよ。あいつだよ」


「誰のこと、言ってるの?」


「この前、居酒屋で会ったスーツの男……」


そこまで優が話すと、会話は途切れた。


優は気付いたんだ。


遠藤さんが好きだって、なんでわかったんだろう?


まったく、それらしい素振りは見せなかったはずなのに、どうしてわかったのか気になる。


「なんで?」


優の的確かつ鋭い一言に動揺せず、自分でも驚くほど冷静に聞き返す。


「すぐわかった」


掠れた声でそう言うと、優は微かに息を漏らした。