「やめて! 離してよ! 嫌!」


優が力を込めて、本気で私の肩を掴んで体の向きを変えようとする。


その強引さに憤りを感じた。


「もう、いいかげんにして! しつこい!」


私は立ち上がって、優を怒鳴った。


店内は、それまで騒々しかったのに水を打ったようになった。


客たちの視線が一斉に私たちに集中すると、恥じ入る思いがした。



こんな恥をさらすことになったのは全部、優のせいだ。


私は優の顔を睨みつけた。


優も立ち上がって睨む。


双方、対峙したまま動かない。


辺りを緊迫した空気が包み込む。


「お前、他に好きな奴ができただろ?」


怒りをこめた目つきの優が、低い声で問う。


図星を指されて、返す言葉がない。


「同じクラスの奴か? 誰なんだ?」


問い質そうとする優を尻目に、私は視線を足元に落とした。


「ここに来てるってことは、ここにいる奴か? なあ、どうなんだよ?」


優が私の両肩を掴んで揺すぶる。


「なんか答えたらどうなんだよ! なんで黙ってんだよ!」