「優!」


花音が大きな声で叫ぶ。


ドキッとして身体が軽く震えた。


まともに優の方を見ることができない私は、視線をウーロン茶のグラスに向ける。


優がこちらに歩み寄ってきた。


嫌な予感がする。


「隣、座っていい?」


物腰柔らかな口調で優が尋ねる。


「うん」


ずっと視線をグラスに向けたまま、頷く。


優は私の隣の席に座った。


「花音、ウーロン茶ちょうだい。それからね、焼き鳥ととろろ焼き。だし巻きに鮭おにぎりにつくねも」


「はい、はい。ごゆっくり」


優は、注文を終えると口を閉ざした。


私も無言で水滴の付着したグラスを見つめる。


ウーロン茶が運ばれてきて、焼き鳥の皿ととろろ焼きの皿が置かれた時、優がこう切り出した。


「薫に会いたくなって家に行ったんだ。お母さんが、ここだって教えてくれて来た。最近は、しょっちゅう来てるんだって? なんで?」


私はその問いに、答えることができなかった。


その上、優の目を見ることもできない。


「メール送ったんだけど、見た?」