それから、夢路を辿るから睡眠不足だ。


もう、優は私の心から消えていた。


今は、遠藤さんしか見えない。


人間は心変わりする。


移り気な私をどうか許してほしい。


「唐揚げ男のどこがいいんだか。見た目だけじゃない。ずーっと優の方が信用できる」


花音が悪態を吐く。


「『唐揚げ男』って……。そういえば、唐揚げのお礼言い忘れてた」


今度、会ったら絶対言おう。


これは会話の糸口になる。


恋愛の基本はコミュニケーションだと思う。


会話がなければ、恋愛は成り立たない。


積極的に話しかけて振り向かせたい。


私は優がいるのに、恋の罠を仕掛けることにした。


なんて罪な女だろう。


出し抜けに、ガラッと勢いよく扉が開く。


私はそれに反応して見やる。


遠藤さんじゃないだろうか?


そんな淡い期待を胸に抱いていた。


ところが、そこに立っていたのは見たことがある茶髪で天然パーマの男の子だった。